年月

朝の通勤電車で、白んだ町並みを眺めながら、
朝の光がすきだなぁとおもった。
ゆるやかな太陽のひかり。
まだ目覚めきらない人や町。

がたんごとん と揺られながら、ふと
卒業式後のオール明けを思い出した。


わたしは始発電車に好きな人と乗って、
先に降りる好きな人を見送った。


少し白んだ町並み。


だぁれも居ない車内。
ひとりのわたし。



わたしの好きな人はわたしがおもうほどには
わたしを好きではないのだと泣きながら帰ったのだ。



もう卒業だった。
好きな人とも、友人とも、学校とも、さよならだった。
今でも、簡単に思い出す事ができる。その時の朝の情景。



そして、その時からずっと好きなまま、
6年後にその人と結婚して、
今その人との子がお腹の中にいるのだ。


わたしは、2人には敵わないと時折思う。



劇的なことも、衝撃的な事も、危機も、
なにもかもなかったけれど、その平々凡々な
その平穏無事な 2人の道のりを思って、


わたしはあの朝の、わたしをそっと愛おしく思う。



photo:canon EOS kiss5
film:PORTRA160