いちねんまえ
一年前の事を思い出してみる。
やたら腹を撫でていた。
ぽっこりと出たお腹を、デブなんです、と言ってふざけていた。
そうしてしばらくは電車に乗らなくてもいいという節目の日で、とても嬉しかった。
寒さや冷えも加担してか、時おり張って痛むお腹をさすりながらけれども、いろんなことするぞー、会いたい人に会いにいったり、行きたいとこに行ったり、するぞー、なんて思っていた。
1週間後の検診で自宅で安静にしていてくださいなんて言われちまうことも予想できずに。
いのちというとても不安定なもの、それを育む生命力。人間て、すごい。そんな感想ばかり、わたしはちっとも妊婦らしからぬ人間だったな。
それからいちねん。
もう、まだ、やっと、いつのまにか、いちねん。
変わったことがある。
変わらないことがある。
冬がすきだということ。
雨がすきだということ。
コーヒー豆を煎った匂いがすきだということ。
だから、だいじょうぶだ。
だいじょうぶなのだ。