出し惜しみ


さよなら、じゃなくて
いざさらば、でもなくて
「また、ね」
そういって別れた言葉で、最後になることもある。


出し惜しみしていたんだと思う。
少しずつ少しずつ、わたしはあなたが好きだと言うことを
態度や仕草で伝えて、言葉にはなにもしなくって
とっておきの時に控えて、いまはまだいわないでおこうなんて。


「また、ね」


そうして訪れた別れがわたしに与えたものは、誰かと共有できる時間というのは限りのあるものなのだと言う事実と、誰にとっても(わたしにとっても)それはいつ訪れるかは分からないという恐怖心だった。


いつも、怖いのは、
生がなくなることではなく、
もう、会えなくなる、ということ。

もう、時間を共有できなくなるということ。


生きていてほしい。
たったそれだけのことが叶わないことが、この世にはある。

後悔をしない生き方は、どうしたって出来ない。

それでもせめて。
出し惜しみなく、伝えたい。

あなたのことが、すき。

とても、とても、すき。

続きはいらない。
どう、にもならなくていい。

あなたのことが、すき。