生まれ、死ぬ事

誕生日、おめでとう、わたし。


けれどそんなおめでたい日は、
訃報からはじまる。



マサさんのおじいちゃんが、亡くなった。


ご実家で同居されていて、
年始はいつもおじゃまして挨拶にいっていた。




今年はマサさん案で年始の帰省を1週間ずらしていたのだ。
本当なら亡くなる前に会えていた。




マサさんはこういうタイミングでいつも
あと少しの所で誰の死に目にも会えて来なかったと言った。




マサさんだけ先に帰省してお葬式を済ませる。

わたしはやっと今日行って、お線香をあげる。




あなたの、笑顔をずっと覚えています。と、伝える。




おじいちゃんととても仲の良い猫がいて、
おじいちゃんにだけすごく懐いていて、
いつも いつも一緒にいて、


その猫が、階段の上で鳴くのだ。

おじいちゃんの部屋の前で ずっと ずっと
ずっと ずっと 何回も 何回も 何回も 鳴くのだ。



「もう居ねぇんだず」


そう、みんながつぶやく。




人が死ぬという事、
それを受け入れる事に必死になっている。
そうしたら 今度は よく分からなくなってくる。

死んでしまったという事実がそこにあるだけで
感情がセットにならない。


けれど、猫の鳴き声が「寂しい」や「会いたい」に思えて
こみ上げてきた気持ちを、ため息で流した。